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義理の母が亡くなるまで介護したのに、住み慣れた家から出て行けと迫られる

孝雄(仮名)さんは、埼玉県のK市で義理の母と2人で暮らしていました。

孝雄さんの妻は6年前に病気で亡くなりましたが、残念ながら孝雄さん夫婦は子供を授かることはできませんでした。

妻が亡くなって以来孝雄さんは義母の介護を一人でしてきたのですが、その義母も先日96歳で大往生を遂げました。

それから、孝雄さんは思ってもみない事態に巻き込まれたのです。

介護

義母がなくなって数日後、亡くなった妻の兄弟である長男と長女が遺産の分割を求めてきました

遺産と言っても、そのほとんどは孝雄さんと義理の母が暮らしてきた家と土地のみです。

その家と土地は4年前に義理の父が亡くなったときは長男と長女も「母が住んでいるのだから」ということで、何の問題もなく義理の母が相続することに同意しました。

 

けれど今回は孝雄さんに対して 「本当の家族ではない孝雄さんには相続人の資格はない。法定相続に従って遺産分けをするべきだ」と、長男と長女が申し入れてきたのです。

孝雄さんは相続についてなど、これまで一切勉強したことはありませんでした。

義母が亡くなるまで介護を続けた自分に対して「住み慣れた家を出て行け」という内容の長男と長女からの申し入れは孝雄さんにとっても到底納得いくものではなく、怒りがこみ上げてきました。

そこで、申し入れに対抗する為、相続について色々と調べてみたのです。

 

しかし結果として、住み慣れた家を相続する権利が孝雄さんにはないことがわかったのです。

妻の亡き後、義理の母を一生懸命に介護してきた孝雄さんですが、もちろん義母と血縁関係はありません

法律的には、血縁関係がなければ他人なのです。

法定相続に従って遺産を分割する場合、義理の母の実子である長男と長女が1/2ずつ相続することになります。

 

孝雄さんは長男と長女に対して「突然家を出て行けと言われても困ります。それに埼玉を離れているあなた方にはこの家や土地は必要ないでしょう」と問いかけました。

しかし2人からは「この家は私たちが生まれ育った家であって、本来あなたのものではない。もしこの家に住み続けたいのであれば、私たちの権利分のお金を支払って欲しい」という要望を突き返されてしまったのです。

 

相続では「家は【固定資産税評価額】」で、「土地は【路線価】」で評価されます。

【路線価】とは、相続や贈与の税金の計算のときの土地の評価に使う値で、標準的な宅地の 1平方メートルあたりの価格をその土地が面している道路(路線) ごとに決めたものです。

この基準は国税庁がHPでも公表しています(http://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm)。

現在路線価は時価の80%程度と言われています。

 

調べてみたところ、家は建ててから40年以上が経過していてほとんど価値がないことがわかりました。

しかし、土地は100坪以上あり立地も良かったことから、路線価で評価しても1200万円くらいにはなることがわかりました。

当然の事ながら、1200万円もの現金は孝雄さんにとって到底用意できる金額ではありません。

交渉にも疲れた孝雄さんは、住み慣れた家を出て賃貸アパートを借りることにしました。

結局その後家と土地は売却され、そのお金は長男と長女で1/2ずつに相続することになりました。

 

本当に孝雄さんに対応する術はなかったのでしょうか?

いいえ。ちょっとした知恵さえあれば、この状況は変える事は十分可能でした。

住宅

まず、義理の母と養子縁組をしていれば、実子と同じように遺産を相続する権利を得られました。

この場合、孝雄さん、長男、長女の3人で遺産を分けることになるので、孝雄さんにも遺産を相続する権利が1/3はあったのです。

 

また、義理の母に遺書を書いてもらい「家と土地は孝雄に遺贈する」という内容があるだけでも状況は大きく変わります。

子供には「遺留分」が認められているので、孝雄さんにも100%遺贈するという遺書があったとしても長男・長女は遺留分権利者の為、法定相続分の1/2を相続する権利があります。

このため、孝雄さんが遺贈を受けられるのは遺産総額の1/2までになります。

孝雄さんが義理の母と養子縁組をし、さらに遺書で遺産のことを書いておいてもらえば、長男と長女の法定相続分は合わせて2/3で遺留分はその1/2で1/3なので、孝雄さんは最大で2/3を相続することが可能です。

孝雄さんに遺産を相続する権利があれば、長男と長女とも対等な立場で遺産分割協議ができたはずです。

今回の相続に際しても、1/3ずつの共有名義にしておき、義母が亡くなった時点で孝雄さんの持ち分を長男と長女に遺贈するという提案が通れば孝雄さんは住み慣れた家に住み続けることも可能だったかもしれません。